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サントリー:ブラビンス指揮,都響B定期,上原彩子(pf) [音楽時評]

9月27日,サントリーホールに東京都交響楽団B定期を聴きに行ってきました.
指揮はイギリス出身で,ロイヤル・フランダース・フィル首席指揮者のマーティン・ブラビンス,ピアノ・ソロにかつてのチャイコフスキーコンクールの覇者,上原彩子が参加していました.

プログラムは,
プロコフィエフ:  歌劇「戦争と平和」序曲 作品 91
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第2番 ト長調 作品44
        ※※※※※※※※
プロコフィエフ:  交響曲第5番 変ロ長調 作品100
とオール・ロシヤモノでした.

ブラビンスは,なかなか曲を大きく見せる指揮をする人で,最初のプロコフィエフは,トルストイの原作によって,ナポレオンの侵攻を受けながら勝利する歌劇の序曲で,ほんの5分ほどの曲ですが,抑揚のある演奏で,叙情性豊かに聴かせてくれました.プログラムによると,歌劇の完成は,1953年に作曲者が亡くなる前年の5稿になり,初演は1957となっています.独裁体制下に作曲する困難さを物語る作品です.

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番は,第1番のピアノとオーケストラが対抗的に渡り合う協奏曲とはかなり趣を異にしています.この曲は第1番の献呈を拒否したルビンシテインに献呈すべく作曲を進めますが,
Only at Kamenka, during late April/early May, did Tchaikovsky work at the orchestration, which was finished on 28 April/10 May (according to the date on manuscript). On 2/14 May the full score was on its way to Jurgenson. と最後のオーケストレーションにかなり苦しんだようです.

第1楽章は,格調高い第1主題と,抒情的な2主題を持つソナタ形式ですが,初めの部分でのピアノとオーケストラの協奏のあとは,オーケストラとピアノ・ソロが代わる替わるに演奏するユニークなスタイルをとります.つまりカデンツァが何度も入るので,ピアノ・パートはオーケストラとの対抗で,たいへん難易度の高い部分が繰り返されます.
第2楽章は一転して室内楽風になり,ピアノ,第1ヴァイオリンのコンマス,チェロ首席がトリオ風にたいへん優美な対話を展開します.ここでは矢部達哉と古川展生がピアノと並んでたいへん優美な好演を聴かせました.
第3楽章は,活発なフィナーレで,ピアノのカデンツァを繰り返しながら,壮大なコーダに入って終わります.

この曲は,長すぎる,わかり難いということで,改作が求められますが,チャイコフスキーが合意しないまま,Notwithstanding the fact that Tchaikovsky rejected many of the proposed changes, Aleksandr Ziloti significantly altered the concerto, introducing cuts and transpositions to which the author had not given his consent.
This version of the concerto was published by Petr Jurgenson in 1897, after the composer's death: the full score and orchestral parts in September and the arrangement for two pianos in October.
改作が出版されています.

しかし,1955年になって,In 1955 the concerto appeared in the composer’s collected works, edited by Aleksandr Gol'denveizer, in which the author’s text was reproduced from the autograph full score and arrangement for two pianos. ということで原典版が再発見されたモノが,当日,上原彩子さんによって,見事に再現されたことになります.

プロコフィエフの交響曲第5番は,彼の傑作の一つに数えられています.いったん西欧に亡命しながら,何を思ってかスターリン治世のソ連に舞い戻ったプロコフィエフは,長く交響曲から離れていましたが,ソ連の戦勝が確かになった1945年に,彼自身の指揮で初演されています
古典的な交響曲で,第1楽章はソナタ形式の緩徐楽章で,叙情性をもった2つの主題で始まり,展開部で意想外に金管楽器,打楽器が活用されて,壮大に曲を閉じます.しかし,この部分では斉奏のなかで,トライアングルの音など聞こえようがなかったでしょう.第2楽章はアレグロのスケルツオで,再現部から盛り上がりを築きます.第3楽章は再び緩徐楽章で,哀愁に満ちた旋律が続き,悲劇的な頂点が気づかれて終わります.終楽章はアレグロで1楽章の主題の回想の後,ロンド風にいくつもの楽想が展開されて華やかなコーダにはいりますが,華やかさを打ち消すような響きが入り交じっておわります.
時代を色濃く反映した交響曲というべきなのでしょう.

指揮者ブラビンスは,なかなかよく都響の響きを引き出していたと思います.特に上原彩子との協演は特筆に値するモノがありました.

なお,10月のヴェルディの”German Requiem"は,今シーズンの楽しみの一つでしたが,登壇予定だった指揮者コンスタンティン・トリンクスが福島の原発事故を理由に,来日をキャンセルしたそうで,たいへん残念んい思います.


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