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紀尾井ホール:小菅優(pf)ベートーヴェン・チクルス第2回 [音楽時評]

小菅優の国内外の華々しい活躍はつとに知られていますから繰り返しませんが.1983年生まれで,1993年からヨーロッパ在住といいますから,河村尚子と並ぶ国際派ピアニストといえます. 
河村尚子は国際コンクールをバネにしたところがあり,割とオーソドックスな演奏スタイルのなかに広い表現力を発揮していますが,今夜聴いた小菅優は,国際コンクール歴のないまま売れっ子に仲間入りしたこともあって,なかなか個性的な演奏を展開していました.

つい先日の神尾真由子のリサイタルが完売していたのに比べると,90%行かない入りでしたが,ベートーヴェン・チクルスで「テンペスト」がプログラム化されていた割には意外な感じでした.

プログラムは,オール・ベートーヴェンで,                  
ピアノ・ソナタ第16番 ト長調 op.31-1
ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 op.31-2 「テンペスト」   
ピアノ・ソナタ第18番 変ホ長調 op.31-3 
            ※※※※※※※※  
ピアノ・ソナタ第28番 イ長調 op.101 
でした.

今夜の小菅さんは,音の強弱よりも,たいへんリズムを重視して,休止符をやや恣意的に使って,リズム感を強調していました.op.30には適した演奏だったと思いますが,「テンペスト」の最後の音型が強く打鍵されず,静かに終わったのは,プログラムで・ノートに「最後の爆発もまたユーモアがありますね」と書かれていたのと違った感じで,意外で,しかし,たいへん興味深いユニークな解釈だったと思います.

ソナタ第28番でも,リズム感が強調されていましたが,第28番第4楽章の終わりは,第1楽章の終わりと同じように,「高い音と低い音」が弾かれるところに「天と地」の象徴を見る,とプログラム・ノートにありましたが,必ずしも右手と左手の強弱が2度同じバランスだったとは思えませんでした.しかし,その解釈の意図は聴き取れたと思います.

日本在住の中堅以上のピアニストが,とかくどの作曲家も,あまりそれぞれの特性を感じさせない演奏に終わりやすく,食傷気味だったところですから,彼女の演奏はたいへん個性的なところに新鮮さを感じます.

次回はソナタ第9,10番(op.14-1&2),第13,14番(op27-1.27-2「月光」),そして第27番op.90というプログラムが予定されています.どんな個性的解釈を見せてくれるか,楽しみです.


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