紀尾井ホール:神尾真由子リサイタル [音楽時評]
6月24日,神尾真由子のヴィオリン・リサイタルを聴きに,紀尾井ホールに行ってきました.
プログラムは,パガニーニ:24のカプリース 作品1 全曲(1番から24番まで)でした.
バッハの無伴奏ソナタとパルティータが芸術的作品の頂点とすると,技巧的作品の頂点がこのパガニーニの24のカプリースだと思われますが,とにかくパガニーニの超人的な技巧を散りばめた作品ですから,プログラムの表現から借りますと,高速のスタッカートやサルタート(弓を飛ばして弾く)奏法によるアルペジオ(分散和音)の連続,広い跳躍音程のための移弦の練習曲,オクターブ重音とタブル・トリル,一度に複数の音を鳴らす重音奏法,素ピッカーとに終始し,音符が駆け巡る,トレモロの伴奏を伴った重音奏法の旋律,スタッカートの妙技,広い跳躍音程がレガートで演奏される,6度重音による美しい旋律,左手の指1本で弦をはじきながら,別の指が主和音を押さえる超絶的技法...などなどが続きます.
リストやシューマン,ブラームス,ラフマニノフなどが,「パガニーニの主題による」変奏曲,練習曲,狂詩曲などを作っているほど聴いたことのあるメロディも随所に現れ,技巧を固唾をのんで見守る聴衆をまったく飽きさせませんでした.
多くの名ヴァイオリニストによるレコーディングがある中に,まだ若い神尾真由子の2年前のレコーディングが加わっていますが,いつの日が再録音して,彼女のさらなる成長を確認させて欲しいモノだと思いました.
チケットは完売で,満場の拍手が続いたのですが,さすがに神尾真由子はアンコールには手を出しませんでした.
次の来演は2012年初春ということですが,年々の成長を見るのが今から楽しみです.
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