トッパンホール:岡田博美ピアノ・リサイタル [音楽時評]
4月21日,トッパンホールにイギリス在住の岡田博美のピアノ・リサイタルを聴きに行ってきました.岡田さんは,桐朋学園在学中,1979年日本音楽コンクールで優勝し,その後海外でも優勝歴を重ね,1984年からロンドンに在住とあります. 年齢は50台前半でしょうか.一番充実した時期を迎えていると見られました.
毎年のように日本に帰って演奏会を開いているそうですが,私には初めての人でした.ベートーヴェンのディアベリ変奏曲を弾くというので聴きに行ったのです.
プログラムは,オール・ベートーヴェンで, ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 Op.26《葬送》 ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109
※※※※※※※※ ディアベリの主題による33の変奏曲 でした.
第12番は,第1楽章に主題と5つの変奏が持ち込まれており,第2楽章はScherzo,第3楽章は葬送行進曲,第4楽章が明快なロンドという斬新な曲です. 第30番は最晩年の有名な3曲の最初の曲ですが,第1楽章がかなり自由なソナタ形式,第2楽章はがっちりしたソナタ形式,第3楽章で変奏曲形式が取られており,主題と6つの変奏から成っています. つまり,変奏曲形式の序奏として選ばれた感じでした.
ここまでの岡田さんの演奏は,なかなか堅実なモノでしたが,少しこぢんまりまとまった感じを持ちました.岡田さんらしい個性を読み取れなかったのです.
ディアベリの主題による33の変奏曲は,演奏会で聴くのはもう10年以上前のポリーニが,ベートーヴェンのピアノ曲を理解したければ,ピアノ・ソナタOp.111以降のピアノ作品,変奏曲を聴くべきだといって弾いて聴かせたモノにいたく感動した記憶が蘇ります.
岡田さんは,ここでも非常に着実に33曲をテンポ指示に従って弾き分けてくれました.抑揚も明快でなかなかの好演だったと思います.ただ,堅実だけれども,もっとスケール大きく聴かせて欲しかったと思います. それでも,ディアベリは改めてたいへんな名曲だと実感させて貰いました.
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