サントリーホール:都響定期,アツモン指揮,竹澤恭子vn [音楽時評]
4月14日,サントリーホールに東京都交響楽団B定期を聴きに行ってきました.指揮者はモーシェ・アツモン,Violin に竹澤恭子が協演していました.
最初に東日本巨大地震の犠牲者に捧げるといって,バッハの「G線上のアリア」が薄暗いステージで演奏され,終わって,聴衆に起立を求め,全員で黙祷を捧げました.ホールの全員で黙祷を捧げるという経験は初めてでしたが,それだけこの巨大地震の被害が大きかったことからすれば,当然の儀礼だったと思います.
プログラムは, エルガー: ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 作品61 ※※※※※※※※ ブラームス: 交響曲第2番 二長調 作品73 でした.
エルガーのヴァイオリン協奏曲はなかなかの大曲で,3楽章で約50分かかる協奏曲ですが,エルガー自身がヴァイオリンに精通していたこと,Violinist,ロンドン交響楽団のリーダーだったビリー・リードの助言,さらには作曲の依頼者で,エルガーの指揮で初演者となったフィリッツ・クライスラーの助言を得て作曲されただけに,ヴァイオリンのテクニックが鏤められ,流麗な奏法の移行やフレージングが際立つ傑作です. 急-緩-急の3楽章の構成で,第1楽章は切迫感,悲壮感に満ちた第1主題,対照的に穏和で叙情的な第2主題が相次いで提示されたあと,独奏ヴァイオリンが2つの主題を基に華麗に主導して曲が展開されます.ルバートが多用され,豊かな表情が示されて終わります.第2楽章は「感傷的な告別」と形容された楽章で,優美なメロディーと高度の技巧が醸し出す叙情的楽章です.第3楽章は,軽快,快活なロンド風楽章ですが,ヴァイオリンの多彩な技巧が披瀝される独奏パートに,カデンツァが加わって,それを支える弦楽器群にもエルガー創案のピチカート・トレモロが駆使されて,華やかに曲を閉じます. 竹澤恭子さんはこの傑作をすっかり手中のものとして,華麗に名演を展開してくれました.
ブラームスの交響曲第2番の楽章説明は省きますが,急-緩-セミ急-急の4楽章構成ですが,指揮者アツモンは,比較的小さな動きの指揮ですが,たいへんメリハリを付けた指揮ぶりで,この名曲を端正に好演してくれました.ちなみに,アルモンは1978~83年に都響の首席指揮者を勤めたといいますから,相性が良かったのだと思います.
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