東京文化小ホール:東京春祭;河村尚子リサイタル [音楽時評]
私の住居が浦安市に隣接する埋め立て地にあったため,ひどい液状化現象の被害を被ったこともあって,今夜は久しぶりの音楽会でした.
その間,音楽会をフイにしたのは,大震災翌日の武蔵野文化小ホール・オルガン演奏会に物理的にいけなかったこと,はっきり来日をキャンセルないし東京での演奏会をャンセルされたのが,3月17日の武蔵野文化小ホールでのクリストフ・ゲンツ「冬の旅」,19日都響プロムナード・コンサート,24日武蔵野文化小ホールのツエトマイヤーがいずれもキャンセル,3月31日オペラシティのイアン・ポストリッジが来年1月への公演延期,4月2日東京春祭の一環のマーラー「大地の歌」がキャンセルでした.
あと,開催されたのに聴きに行けなかったのが,3月29日の東京春祭,上野学園石橋メモリアルのN響メンバーによる弦楽四重奏,4月3日の東京春祭ウイーンわが夢の街~マーラーの生きた世紀末ウイーン~でした.前者は私が,朝から,放射線治療の後遺症の治療に病院に行って,疲労のため,行ったことのない上野学園に行く気をなくしたこと,後者は私が余震も収束したかと考えて,親戚宅から自宅に戻ったばかりで,早速,後片付けに追われたことから,マラソンコンサートの15時と19時の部を振ってしまったことです.大のアルモニコ・フアンなのですが...
今夕,久しぶりに電車に乗って驚いたのは,エスカレーターが相当数止っていて,階段を上り下りしなければならなかったことでした.年配者や障害者への配慮より節電を優先することには大いに疑問を感じました.
余談が長くなりましたが,河村尚子さんにはその素晴らしさに改めて感嘆しました.
プログラムは,たいへん馴染み深い曲ばかりで, バッハ(ブゾーニ編):コラール前奏曲「シュイエス・キリスト,われ何時を呼ぶ」BWV639 バッハ: シャコンヌ R.シュトラウス: 5つの小品 op.3
※※※※※※※※ ワーグナー(リスト編): イゾルデの愛と死 シューベルト(リスト編): 糸を紡ぐグレートヒェン シューベルト(リスト編): 《美しい水車小屋の娘》より「水車小屋と小川」 シューマン(リスト編): 献呈 リスト: 《愛の夢》第3番 リスト: 《巡礼の年 第2年 イタリア》より「ダンテを呼んで」 でした.
彼女はそれぞれの曲の全体像をすっかり自分のものとして把握していて,そこから曲の構成をしっかりと表現すべく,強音から弱音までの幅広い音域を自在に弾き分け,確実なテクニックで,それぞれの楽曲をくっきりと浮かび上がらせて聴かせてくれました.たいへんな名演奏だったと思います.
改めて,10~20年に1人といってよい俊才ピアニストのこれからさらなる成長を期待したいと思います.
それにしても,ホール内も節電で,これまで読めていたプログラムが,ホール内では読めなかったこと,ステージの照明も点灯しているのは1つだけで,河村さんの姿が上からの照明を受けているだけというのはたいへん違和感がありました.
東京春祭の実行委員長の挨拶が入っていて,「...音楽という芸術が持つ力を信じ,演奏会を開催し,1人でも多くの方々に,生きることの喜びを,蘇らせることではないかと思います」と書かれていましたが,それをいうのなら,当初から予定されていてせっかく開催できた音楽会はきちんと正常に開催すべきで,キャンセルされた音楽会に代えていくつもの追加公演を企画しながら,今夜の演奏会でここまで節電するのは,何か本末転倒というべきではなかったでしょうか.
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