サントリーホール:アルブレヒト指揮読響定期,神尾真由子(vn) [音楽時評]
2月25日,サントリーホールにゲルト・アルブレヒト指揮,読売日本交響楽団定期公演,神尾真由子(vn)を聴きに行ってきました.
普段はなかなか聴けない曲を聴く機会になったのですが,今夜のプログラムは, 《シュポーア・プログラム》
シューマン: 〈『ファウスト』からの情景〉序曲 シュポーア: 歌劇〈ファウスト〉序曲
シュポーア: ヴァイオリン協奏曲第8番 〈劇唱の形式で〉イ短調 作品47
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シュポーア: 交響曲第3番 ハ短調 作品78 でした.
シューマンの〈『ファウスト』からの情景〉序曲とシュポーア: 歌劇〈ファウスト〉序曲 を並べて聴けたのは興味深く思いました.シューマンもシュポーアも,テンポこそ違え初めは明るい調子で始めますが,終結部では,いずれもファウストの救済を思わせる高揚感で曲が閉じられます.
2曲が終わったところで,アルブレヒトがシュポーアについて,そしてヴァイオリン協奏曲第8番の《劇唱の形式で》についての解説がありました.シュポーアはヴァイオリン協奏曲を15曲も残していますが,そのなかで第8番はオペラのアリア様式で作曲された、形式的に因襲にとらわれない作品だそうです.
そのヴァイオリン協奏曲第8番は4部からなっていますが,第1部は,ドラマチックなオーケストラに対してヴァイオリンの叙情的なモノローグが奏でられ,第2部ではベルカント風の美麗なアリアが歌われ,第3部の華やかなレチタティーボを経て,第4部ではヴァイオリンのソロが前面に出て,華麗なカデンツァも展開されました.
暗譜でたいへん好演した神尾真由子は,アンコールに最近彼女がレコーディングしたパガニーニの 「24のカプリース」から第20番を聴かせてくれました.
後半のシュポーアの交響曲第3番は,4楽章構成で,第1楽章はやや暗い感じで始まりますが,最後は明るく終わります.第2楽章は前の楽章の主題から導かれた美しいメロディによって綴られた緩徐楽章,第3楽章はリズミカルな主部と管楽器を多用した中間部からなりますが,最後にフォルティッシモで終わります.終楽章は,これまでの素材を有機的につないで,高らかな終結を迎えます.
なかなか興味深い交響曲でした.
シュポーアという19世紀に活躍した作曲家のいくつもの側面を垣間見せたなかなか素敵な公演でした.アルブレヒトに大きな拍手を贈りたいと思います.
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