SSブログ

オーチャードホール:第16回ショパン・コンクール入賞者ガラ・コンサート [音楽時評]

1月22日,オーチャードホールに第16回ショパン国際ピアノ・コンクール入賞者ガラ・コンサートを聴きに行って来ました.                                                 このガラ・コンサートに疑問を感じたのですが,                                 第1に,14時開演で終演は17時過ぎでした.それは,                               第2に,入賞者が1位1人,2位2人,3位1人に加えて,5位が1人加わっていたからです.      ユリアンナ・アヴデーエワ(第1位 ロシア)、                                  ルーカス・ゲニューシャス(第2位 ロシア/リトアニア)、                               インゴルフ・ヴンダー (第2位 オーストリア)、                                  ダニール・トリフォノフ(第3位 ロシア)、                                          フランソワ・デュモン(第5位 フランス)
つまり5位までをガラ・コンサートに呼んで開かれたのです.                                 第3に,日本にもこの程度のレベルのオーケストラはいくつもあるのに,わざわざ指揮:アントニ・ヴィット;管弦楽:ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団を連れてきたことです.この管弦楽団は仙台,福岡,大阪,東京2回,名古屋,札幌と巡演しますが,このオケガ弾くのは,ショパンのピアノ協奏曲第1番だけで,同じ曲を合計12回も協演するのです.

東京ではオーチャードホールで2日にわたって開かれ,両日とも Sold out ですから,興行的には成り立ったのかもしれません.後援者のヤマハ・ピアノで演奏したピアニストがいましたから,それなりの宣伝成果は挙ったかも知れません.しかし,チェケット代がS・¥12,000 A・¥10,000      B・¥8,000 C・¥6,000 D・¥4,000 というのはいかにも高過ぎたと思います.

現に優勝者のユリアンナ・アヴデーエワは,既に昨年12月のNHK交響楽団定期公演に,シャルル・デュトワの指揮で今日弾いたのと同じピアノ協奏曲第1番を2日にわたって協奏していたのです.そのTV放送がつい昨日,1月21日のN響アワー(午前10:00~11時30分)で放映されたのを私は鑑賞したばかりだったのです.ユリアンナ・アヴデーエワはかつてのマルタ・アルゲリッチ以来の女性優勝者だそうですが,シャルル・デュトワの最初の夫人は,そのマルタ・アルゲリッチだったということがあります.                                                      また,このN響出演の機会を利用して,彼女は,昨年12月8日には,                  【ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル】
日時: 2010年12月8日(水)19:00開演
会場: 東京オペラシティ コンサートホール
主催: KAJIMOTO
後援: ポーランド共和国大使館、ロシア連邦大使館
曲目: -ショパン・プログラム-
     4つのマズルカ op.30
     2つの夜想曲 op.27
     ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.35
     幻想曲 ヘ短調 op.49
     スケルツォ第4番 ホ長調 op.54
     夜想曲 ロ長調 op.62-1
     ポロネーズ第7番 変イ長調 op.61 「幻想ポロネーズ」
チケット: S席7000円/A席6000円                                     を既にやっていたのです.

さらにいえば,彼女はNew York Philharmonic とも,そのEuropean Tour で Warsaw で協演し,この1月初旬には,New York で協演したのです.

When the Philharmonic season was announced, the orchestra committed to a New York performance with the winner of the 16th International Chopin Piano Competition in Warsaw, which Yulianna Avdeeva, a young Russian pianist, won in October.

Competitions are often derided for their scorecard mentality, but they offer aspiring musicians a coveted chance to perform with major orchestras. Ms. Avdeeva made her debut with the Philharmonic during its recent European tour, performing the E minor Concerto in Warsaw. She is the first woman to have won the competition, held every five years, since Martha Argerich’s victory in 1965. Other storied winners include Garrick Ohlsson, Krystian Zimerman and Maurizio Pollini, all now much admired Chopin interpreters.

Ms. Avdeeva, who looked stylish in a black tuxedo and heels, performed with the requisite technique here, blending a muscular approach with an ability to tease out Chopin’s singing lines expressively. Yet there was nothing distinctive or probing about her playing.

Almost all of Chopin’s music is for piano, and his genius seems to have been directed entirely toward the keyboard. The orchestral writing in his two piano concertos is mostly stolid and uninspired. Apart from the orchestral introductions the ensemble is merely a dutiful accompanist throughout, although Mr. Gilbert notes in a blog for Musical America that “playing the orchestral accompaniment in Chopin’s concertos is far from straightforward.”

He led a nuanced rendition, with the orchestra a thoughtful partner for Ms. Avdeeva. As an encore, she offered a finely crafted interpretation of Chopin’s Mazurka in A minor, Opus 67 No. 4.

このように,権威あるChopin Competition の優勝者には,New York Philharmonic も NHK交響楽団もそれぞれ debut の機会を予め用意していたのです.また,前に紹介しましたが,London ではRecital の機会が提供されました.

それに較べて,今日のガラ・コンサーとはいったい何が目的だったのでしょう.ワルシャワからわざわざそこそこのオーケストラを連れてきて,しかも1位から5位までの5人も連れてきて,それぞれに時間を割り振ってコンサートをやられたのでは,Chopin Ompetition のWinner,2位,3位,5位にはそんなに差がなかったとでもいいたいのかと思ってしまいます.それではCompetition の自己否定になってしまうでしょう.もっとも今年はソナタ賞,ポロネーズ賞,幻想ポロネーズ賞?協奏曲賞,マズルカ賞などと賞が安売りされていましたが...

強いて憶測を述べますと,ここ最近の過去3回の日本人参加者は,4位2人,5位1人,6位1人でしたから,昨年最多17人の参加者を送った日本人が誰かは入賞すると想定して,日本側の希望で低位入賞者も拾うことにしたのでしょうか.もしそうだとしたら,日本人17人は今回すべて第2次予選までで落ちてしまった経験を次に生かすべきでしょう.

演奏への私の感想を述べますと,優勝者の25歳のYulianna Avdeeva は,上に挙げただけでもAlan Gilbert 指揮のNew York Philharmonic とシャルル・デュトワ指揮のNHK交響楽団とのそれぞれ複数回の協演で一段と成長したと感じられました.                                    彼女は,ゆとりを持って,正確なピアノ・タッチで,メロディーを美しく響かせていたと思います.まだそれほど個性的な演奏ではありませんでしたが,演奏の幅が広がって,今日の断トツのできばえを見せていました.アンコールにワルツを1曲弾いてくれましたが,これは,なかなか個性的な表現力豊かな演奏だったと思います.

2位以下については,コメントする気持が湧かなかったので,ご了承下さい.

意見としては,せいぜい1,2位と過去の優勝者(日本在住者もいるはず)のガラ・コンサート,1位と2位にはショパンの第1番,第2番のピアノ協奏曲を,過去の優勝者は,ソナタの1曲,そして新しい経験を積ませる意味で,日本の指揮者とオーケストラ(できれば開催場所ごとの)との協演にぜひ是正して欲しいモノだと思います.それだけでも,チケット代は3割以上安くできるでしょう.

             

 

 

 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

Lang Lang, classical..The Greatest 10 Comp.. ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。