JTアートホール:河村尚子の室内楽 [音楽時評]
1月19日,JTアートホールに「河村尚子の室内楽」を聴きに行ってきました.先にチケットを買っていたのはトッパンホールのジャンーギアン・ケラスだったのですが,河村尚子に惹かれてJTアートホールに回ってしまったのです.ただ,今はちょっと後悔しています.
今夜のプログラムは,出演者と併せて,
フィールド:ピアノ五重奏曲 変イ長調H.34 河村尚子,米本響子,佐藤俊介,鈴木康浩,
山本裕康
グリンカ: 大六重奏曲 変ホ長調 河村尚子,米本響子,佐藤俊介,鈴木康浩,
山本裕廉,吉田秀
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シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調「ます」Op.114,D.667 河村尚子,佐藤俊介,
鈴木康浩, 山本裕泰,吉田秀
でした.
全体の感想として,前半はヴァイオリンが2人入っていて割と良い弦とピアノのバランスが取れていたのですが,後半,今夜のプログラムの目玉「ます」では,ヴァイオリンが1人になってしまって,どうにも4弦のバランス,ピアノとのバランスが急に悪く聴こえてしまったのです.「ます」で作曲者が quartet 形式ではなくヴァイオリンを削ってさらに低弦を加えたのは,それでもヴァイオリンあってのバランスを考えていた筈だと考えるからです.
河村さんは読響の時から日本に帰っていましたが,ヴァイオリンの2人は帰国の時季がずれて,全体を通したリハーサルが十分ではなかったのではないでしょうか.特にビオラ,チェロ,コントラバスが名手揃いでしたから,外国勢が弦楽器に優れた日本に帰っても,それで気を許しては,上手くいかないと思います.
とりわけ佐藤さんは,近年,バロックに関心を強め,ヴァイオリンをノン・ビブラートにも適合する21世紀製に持ち替えられたそうですから,他の弦楽器3人がもう少しシューベルト時代のあり方に配慮されると良かったのでしょうが...
「ます」があまりにも有名な曲だけに,これを手軽に見ないで,もっと重視して準備して欲しかったと思います.前半のグリンカなどなかなかの名演奏だっただけに,後半が惜しまれます.
細かなことは抜きにして,ともかく次の機会に期待したいと思います.
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