オペラシティ:アーノンクール指揮ウイーン・コンツェルトス・ムジクス [音楽時評]
11月2日,オペラシティ武満メモリアルホールにニコラウス・アーノンクール指揮ウイーン・コンツェルトス・ムジクスを聴きに行ってきました.
1つ前のブログで,New York におけるイギリス・スコットランド古楽演奏団体の音楽評をご紹介していますが,幸い,日本にも古楽演奏で有名な今年81歳のアーノンクールが1953年に設立した手兵のウイーン.コンツェルトス・ムジクスを聴く機会を得られたのをたいへん嬉しく思います. アーノンクール自身のメッセージで,これが自分の最後の演奏旅行だといっています.因みにこれまでの来日歴は1980年と2006年だそうです.
プログラムは,モーツアルト2曲で, セレナード第9番 ニ長調 K.320 「ポストホルン」 ※※※※※※※※ 交響曲第35番 ニ長調 K.385 「ハフナー」 でした.アーノンクールは,この2曲はいずれも惜別の曲だといっています.
「ポストホルン」は,7楽章構成ですが,その第6楽章Menuetto--trio Ⅰ&Ⅱ の第2トリオで当時郵便馬車で使われていたポストホルンが登場するので付けられた名称だといいます.
とにかく出始めから,ノン・ビブラートで弦の響きが生き生きとして澄んだ美しい音を出しているのに感動しました.そして管楽器がいずれもバルブなしの古楽器を使っていましたが,その響きがたいへん柔らかいのに関心しました.バブル付きの管楽器だったらもっとキンキンと響くようなホルンも,トランペット(楽員名簿ではNatural Trumpet)も,少人数の弦楽器とよくバランスしているのです. 楽器構成は,Violin が第1,第2合わせて16名,Viola 4人,Cello 3人,Double bass 2人で対抗配置でした.つまり左側に Double bass 2人だったのですから,管楽器が古楽器でなければバランスが崩れていたでしょう. Flute とOboe 各3人,Bassoon 2人,Contrabassoon 1人,Natural trumpet とTrombone 各3人,Timpani 1人でした.この数字は数えたモノではなく,名簿から楽器が目についたものを拾った数字です.そういえば,Timpani の音もたいへん優しいものでした.
バブル付きの金管楽器がないと,オケの音に弱音から強音までたいへん幅が出来て,すごく豊に聴こえました.
セレナード第9番は,
Ⅰ.Adagio maestoso--Allegro con spirito,
Ⅱ. Minuetto: Allegretto,
Ⅲ. Concertante:Andante grazioso,
Ⅳ. Rondeau: Allegro ma non troppo,
Ⅴ. Andante,
Ⅵ. Minuetto--Trio Ⅰ&Ⅱ
Ⅶ.Finale: Presto
と変化に富んだ曲ですが,アーノンクールは,即興性の信奉者でもありますから,Tempo や楽器のバランス にそれを取り入れていたと思います.作曲家が楽譜に書くと平板になってしまうから,指揮者は即興性を補完しなくてはという信念のようです.
その点で,4楽章構成の有名な交響曲「ハフナー」も,素晴しくバランスの取れた,豊かな音響に乗せた好演でした.馴染み深い曲ですから,終わってアーノンクールが両腕を降ろした時点で拍手が始まったのですが,1度,2度と拍手が止んで,アーノンクールが指揮台を降りようとしてから,やっと一斉の拍手になったのが,興味深いエンディングでした.
結構,空席が目立ちましたが,明日11月3日「文化の日」が今回の最終公演になりますから,古楽演奏にご関心の方で未だ聴いておられない方は,空席を確かめてお出かけになるとよいと思います.
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