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JTアートホール:第50回記念特別演奏会 [音楽時評]

表題だけでは分かり難いと思いますが,正確には,「JTが育てるアンサンブルシリーズ」の第50回が2010年4月14日に「クヴェレ・クアルテット」によって達成されたので,とうことです.

プログラムは生誕200年のオール・シューマンで,出演団体,出演者は多彩でした.
ピアノ三重奏曲 第2番 へ長調 Op.80    Pf;村田千佳,Vn;山田麻実,Vc;伝田正則 
弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 Op.41-3 
    ウエールズ・クァルテット:Vn;1崎谷直人,2三原久遠,Va;原裕子,Vc;富岡健太郎 
           ※※※※※※※※      
「おとぎ話」Op.132 (クラリネット,ヴィオラとピアノのための) Cl;金子平,Va;原裕子,Pf;村田千佳 
ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44
            Pf:山本亜希子,Vn;守屋剛志,Vn;瀧村依里,Va;脇屋冴子,Vc;伝田正則  
という50回記念ならではの多彩さでした.

最初のピアノ三重奏曲は3人の演奏レベルが揃っていて,なかなかの好演でした.ヴァイオリンもチェロもよく音を響かせていました.

次の弦楽四重奏曲第3番は,どうにもいただけませんでした.ウェールズ・クァルテットは2009年の7月1日にJTアートホールで演奏会を開いたのですが,その時にも私は次の点を批判していました. 

この四重奏団は,プロジェクトQで,ベートーヴェンのオリジナルなスピード指定ですごく緊迫感のある演奏を聴いて注目していたのですが,その後,昨秋のミュンヘン国際音楽コンクールでラッキーにも3位入賞しました.しかし,帰国後,今春の松尾コンサートで聴いて,おやおやと思うほどレベルが低下していました.その後,崎谷直人/水谷 晃Vn 横溝耕一Va 富岡廉太郎Vc の4人から水谷と横溝が抜けて,2人の新人を加えていました.新しいメンバーは,
崎谷直人/三原久遠Vn 原 裕子Va 富岡廉太郎Vc と変わっていました.                                その日のプログラムは,ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第4番 ハ短調 Op.19-4/ ハイドン:弦楽四重奏曲 第67番 ニ長調「ひばり」 Op.64-5 Hob.Ⅲ-63/シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調「死と乙女」 D.810 でしたが,  
率直にいって,楽しめませんでした. 
何よりも残留組の2人,崎谷直人と富岡廉太郎,第1ヴァイオリンとチェロが前列に出て,第2ヴァイオリンとヴィオラが後方に座ったのですが,崎谷と富岡がほとんど曲を独り占めして,新人に少しも譲ろうとしなかったことです.2人だけがガンガン弾いていて,新人2人が温和しかったのです.それもガンガン弾くのが名手なら良いのですが,第1ヴァイオリンの音はそれほど美しくはないし,チェロはシームレス・フレージングではなくって,音程,音量が共に不安定だったうえ,高音弦と低音弦の間に音の均質性がなかったのです.その2人と新人2人の不揃いが今夜の演奏をほとんど台無しにしていました.

その後4人ともスイスのバーゼル音楽院に在籍しているようですが,私の感想は基本的に昨年7月1日と変わりませんでした.その時と同じく左手前と右手前に古株が並び,新人2人,第2ヴァイオリンとヴィオラが間に一歩下がって並んでいるモノですから,只でさえ第1Vn とVc の音が一段と良く響くのです.今夜は両者の音は昨年より改善されていましたが,基本的なクァルテットのバランスの悪さは変わらなかったのです. 

私の考えでは,特に崎谷はしばらくソロや他の組み合わせ参加はやめて,クァルテットに専念すること,そして,交互に第1Vnと第2Vnを交替すること,それから富岡は後列に下がって,ヴィオラを右手前に並べること,を奨めたいと思います.つい先日来日した世界トップクラスのクァルテット,エマーソン・クァルテットでさえ,未だに第1Vn,第2Vn が交替しているのです.そうすれば音のバランスの問題は1年内には改善するでしょう.           
そういえば,最初ステージに出てきた時に,3人は後ろに並んだのに,崎谷だけつかつかと三歩前に立って挨拶したのです.この瞬間から悪い予感がして,それが的中したのです.

批判が長くなってしまったので,あとは要約しますが,「おとぎ話」は楽器の組み合わせが珍しかったこともあってたいへん興味深く聴きました.特にクァルテットで目立たなかったヴィオラの原裕子さんが,此所では前列に出て,たいへん美しい音を響かせていました.

最後のピアノ五重奏曲は,今夜の白眉でした.先日の第1生命ホールでの野原みどりとミロ・クァルテットと今夜のJTアートホールを併せてブラームス,ドヴォルザーク,そして今夜のシューマンのそれぞれピアノ五重奏曲を聴き較べられたのがとりわけ興味深かったのです.                                                           楽器のバランス問題は,ピアノ三重奏曲同様,ピアノと四楽器間が重要で,弦楽器間はあまり問題にすることはないでしょう.

         

 


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