王子ホール:アルカント・カルテットの名演 [音楽時評]
9月25日,王子ホールに2002年にドイツで結成されたというアルカント・カルテットを聴きに行ってきましたが,素晴しい世界トップ・クラスのカルテットを堪能しました.
メンバーは,第1Violin: アンティエ・ヴアイトハース,現代ドイツ屈指の女流Violinist.
第2Violin: ダニエル・セベック,1983年からカンマーフィル・コンマス.
Viola: タベア・ツィンマーマン,世界的 Violist.
Cello: ジャン=ギアン・ケラス,世界的にソリストとして活躍.
というカルテットとしては,超一流のメンバーでした.
プログラムは,今夜のコンサート名が「夜はかくの如し」と名付けられていたのは,第2曲目のデュティユーの作品名でした.
ドビュッシー: 弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10
デュティユー: 弦楽四重奏曲「夜はかくの如し」
※※※※※※※※
メンデルスゾーン: 弦楽四重奏曲 第6番 ヘ短調 Op.80
でした.
とにかく各楽器がまことに美しいい音を響かせており,それが各パートが巧く合った見事な一体感あるアンサンブルを聴かせてくれました.音が濁ったことは1度もなかったのではないでしょうか.
日本のカルテットとの比較では,チェロのケラスが桁外れに見事な室内楽演奏をやっていたのが深く心に残りました.
ドビュッシーは,実際にはいくつもカルテットを作曲していたようで,この曲に第1番と番号を付けていたのだそうですが,実際にはこれ1曲に終わりました.4楽章構成ですが,最初の基本楽想で統一した循環形式をとっており,全曲がドビュッシーらしい個性的な和声で綴られています.
1,2楽章がきわめて快活で活発な楽章,3楽章がやや穏やかさをたたえた曲,4楽章の後半にチェロが活発さを導きま,基本楽想がドラマティックに響いて曲が結ばれます.
メンバーのうちチェリストがフランス人で,あとはドイツ人ですが,音楽の共通性が見事な美しい演奏を紡いでいました.
デュティユーは7楽章構成で,そもそも音造りからユニークですが,シンコペーション,ピチカート,トレモロなどあらゆる技法を駆使して,各楽章がどれもユニークに作り上げられますが,7楽章は静かに消え入るように曲を閉じます.
これだけ見事で分りやすく弾かれたデュティユーは私には初めてではなかったでしょうか.
後半のメンデルスゾーンですが,この第6番は,ひとつには姉が亡くなったこと,そして作曲者自身が死を予感し始めた私情が,随所に籠められた曲です.第1楽章ではそうした悲痛な情感がすみずみまでゆきわたっています.第2楽章はスケルツオで,やや暗いトリオが挟まれています.第3楽章は緩徐楽章ですが調性の変化が不安感を伝えています.第4楽章のシンコペーションとトレモロを含めた不安げな主題が展開され,高まりを見せて曲が閉じられます.
このメンデルスゾーンを,このカルテットは実に細やかに一音一音を大事にして見事で美しく聴かせてくれました.
なお,アンコールにブラームスから1楽章,ラヴェルから1楽章を演奏してくれました.特にラヴェルのピチカート楽章は絶品でした.
2夜続けた演奏会なのですが,残念ながら明日はトッパンの予約があって行けないことをたいへん残念に思います.明日は,バルトーク,ハイドン,ベートーヴェンですが,ハイドンやベートーヴェンをどんなに好演するだろうかと想像できるような思いです.
おはようございます shoshinoさん
アルカントは素晴らしかったですね
ところで
>2夜続けた演奏会なのですが,残念ながら明日はトッパンの予約があって行けないことをたいへん残念に思います.明日は,バルトーク,ハイドン,ベートーヴェンですが,ハイドンやベートーヴェンをどんなに好演するだろうかと想像できるような思いです.
とございますが
確か 第1夜9/25(金) 第2夜9/28(月)ではなかったでしょうか?
by ヒデキヨ (2009-09-27 09:48)
ご指摘有難う存じました.私の勘違いで,確かに第2夜28日(月)ですが,私はその日は紀尾井ホールに河村尚子(pf)を聴きに行っていました.
by shoshino (2009-10-02 23:13)