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武蔵野文化小ホール:巨匠ワッツ(pf)の名演 [音楽時評]

9月14日,また武蔵野文化小ホールへ行って巨匠アンドレ・ワッツのピアノ・リサイタルを贅沢に小ホールで聴いてきました.たいへんな名演だったと思います.

先日,同じホールで若手のゴルカのシューベルトを聴きましたが,今夜はシューベルトを3曲も聴かせてくれました.

プログラムは,                                                            リスト:      エルテ荘の噴水~「巡礼の年 第3年」から                         シューベルト:  3つの小品 D.946   (遺作)                                                                                        第1番  変ホ短調,  第2番 変ホ長調,  第3番 ハ長調                 リスト:      ピアノ・ソナタ ロ短調                                                     ※※※※※※※※※※※                                               リスト:      3つの演奏会用練習曲より 第3番 変ニ長調 「ため息」                        シューベルト:  楽興の時  D.780  op.94 より                                                      第5番 ヘ短調,   第2番 変イ長調   第3番 ヘ短調                   シューベルト:  幻想曲 ハ長調 D.760  op.15  「さすらい人」                     とリストとシューベルトでした.

「エステ荘の噴水」は,噴水をスタッカート,トリル,トレモロで多彩に表現されており,ラヴェルの《水の戯れ》やドビュッシーの《水に映る影》に影響を及ぼしたといわれるモノですが,ワッツはまことに表情豊かに演奏してくれました.

これですっかりワッツの虜になったのですが,次のシューベルトの「3つの小品」は最晩年の作品で,元来は即興曲を意図していたようですが,3曲で止まってしまったので,「3つの小品」として出版されたモノです.それぞれの曲が個性的にまことに内容豊かな曲でしたが,ワッツは実に深々と各曲を掘り下げて聴かせてくれました.この3曲のこれほどの名演に接したのは初めてです.

リストのピアノ・ソナタは,単一楽章で,提示~展開~再現といったソナタ形式で書かれているのですが,実質的に多楽章構成を織り込んで,主題を変容させながら循環させるという独自性を発揮しており,まことにダイナミック,ドラマティックに出来ているのですが,ワッツはそのダイナミックな表現にまことにピッタリした鮮明で説得的な演奏を聴かせてくれました.                                 前半の白眉といってピッタリの名演でした.

後半最初のリストの演奏会用練習曲,第3番は,非常に滑らかなメロディが1度聴いたら忘れがたい名曲ですが,それをしみじみと実感させてくれました.

シューベルトの「楽興の時」のうち第3番が誰もが聴いたことのある名作ですが,5番,2番,3番と弾いてくれて,その第3番のメロディがいっそう身にしみました.

後半の白眉は,シューベルトの「幻想曲~さすらい人」でした.4楽章構成のがっちりしたソナタと呼んでもそれに相応しい名曲ですが,リストのソナタの先駆けともいえるモノで,各部が有機的に緊密に関連づけられて統一されており,第4楽章の終結の演奏は聴き手を圧倒するモノがありました.   この曲を年輪を重ねた大家によってこれほど密度濃く演奏して貰えたことは,しかも小ホールで圧倒的な音量で聴けたことは,記憶に刻まれる演奏会でした.

9月16日にはオペラ・シティ,26日には松戸の聖徳大学川並記念講堂でほぼ同じプログラムの演奏会があり,また,23日,24日にはスクロヴァチェフスキー指揮の読売日本交響楽団との協演(ベートーヴェンの4番)も予定されていますから,ご関心の方にはお奨めです.                                        


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