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サントリー:上岡敏之指揮,新日フィル,R.シュトラウス2曲 [音楽時評]

4月27日,月曜日,サントリーホールに行って上岡敏之指揮,新日本フィルハーモニーの定期公演を聴いてきました.                                                                  最初に聴衆の入りですが,60%前後だったでしょうか.これはヨーロッパから招聘した指揮者に申し訳ありませんし,聴衆にもモノ足りなさを感じさせます.もっと楽団として聴衆の開発に努力しないと,さらに聴衆減を招きかねないのではないでしょうか!

次に,プログラム解説ですが,この人の毎度の悪文は仕方ないとしても,こんなに当日の主役,R.シュトラウスをないがしろ(蔑ろ)にしたマイナス・イメージの解説を新日フィルとして何故ノーチェックで掲載したのでしょう?                                               曰く,「バロック組曲の枠が半音階的官能性に浸食される間隙を愛でる,いかにも世紀末ディレッタント的な創作」,「『英雄の生涯』のあと,2つの歌劇を失敗した後,再び筆を執った大管弦楽曲がこの『家庭交響曲(シンフォニア・ドメスティカ)』.『英雄交響曲(シンフォニア・エロイカ)』のパロディが透けて見える.....シュトラウスの私小説と断言されても仕方ない」                      どう見ても最初の「...」は何かの下手な直訳ですね!

新日フィルは,こんな「やっつけ仕事」で,あたかも招聘指揮者の選曲を批判するような negative image の解説を読まされた聴衆が,R.シュトラウスを2曲聴いて楽しんでくれると思うのでしょうか?                                                              もっと真面目に解説原稿の編集チェックを行うべきですし,そもそも解説者の選択をもっと真剣にやるべきでしょう?主観を廃して客観性を取るべきですし,いわば招待した指揮者の選曲を批判するに等しい礼を弁えない解説者は,絶対に採用すべきではないでしょう.彼は,1年ほど前,JTアートホールの室内楽解説に明らかな誤りを書いて,そこは以後疎遠になっている前歴者です.                           4月分のプロは,新日フィルとしては珍しく満席の「扉シリーズ」の4月への参加者にも配布された訳ですから,序でにこの定期の解説を読んで,チケットを買う意欲を削がれた聴衆もいたに違いないではありませんか!

今夜のプログラムは,オール・R.シュトラウスで                                           組曲「町人貴族」作品60: Ⅰ.第1幕への序曲,  Ⅱ.メヌエット,  Ⅲ.フェンシングの先生,                                 Ⅳ.仕立屋の入場と踊り, Ⅴリュリのメヌエット, Ⅵ.クーラント                                                 Ⅶ.クレオント登場,  Ⅷ.第3幕への前奏曲(間奏曲, Ⅸ.宴会.                      ※※※※※※※※                                                                              家庭交響曲 作品53                                                             でした.なお,第1曲に,ピアノの若林 顕が参加していました.

町人貴族は,ヴァイオリン6人,ヴィオラ4人,チェロ4人,コントラバス2人,それに管楽器がひと揃い2人ずつで演奏されました.したがって,緊密度が高く,楽曲毎に代わる代わる主役となる楽器が異なって,そのバランスの妙が,なかなか興味深い組曲として好演されました.                          上岡さんの指揮はたいへん細やかで,まことに的確な指示を与えて,見事な指揮振りでした.

大作「家庭交響曲」は大編成のフル・オーケストラで演奏されました.全1楽章ですが,4部に別れて,家庭内の人間関係,出来事を,主題によって,そして演奏楽器によって描き分けていますが,2部から家庭の昼から夜,そして夜から朝が描かれて,主題の多彩な楽器間の受け渡し,5弦と多様な管楽器,打楽器,ハープの微妙な組み合わせの変化が実に巧妙に演じ分けられ,そして音の強弱の幅を広げ,メリハリをつけて,新日フィルにしては希に見る美しい低弦のピアニシモの響きを引き出して曲を繰り広げ,指揮者の左手人差指の細かな直接的指示,指揮者の身振りの変化が,聴衆も音楽に乗せてくれて,曲の長さを忘れさせるまことに見事な演奏を展開してくれました.

私は上岡敏之が2年前のNHK交響楽団の年末第9で,リハーサルが2日しかなくって,思ったような演奏が出来なかったことを気の毒に思っていましたが,その後の新国立劇場客演指揮での「椿姫」や日生劇場の「魔笛」,さらに読売交響楽団への2度の客演,特に今年初めのブルックナー第7番の好評で,日本国内での評価が非常に高まったことを嬉しく思っていましたが,今夜の好演は,ますます彼への信頼を高め,将来への期待を膨らませるモノでした.大植英次をすっかり追い抜いたといってよいのではないでしょうか.

28日,29日の新日フィルのトリフォニー定期と演目を全く同じにすることで,日本のオケには珍しく3日のリハーサル時間が取れたことが,今夜の好演に繋がったものと思われますが,恐らく日を追っていっそう盛り上がるのではないでしょうか.お時間の取れる方にはお奨めです.                                 

 


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