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サントリー:小澤征爾,新日フィル,ブルックナー [音楽時評]

1月17日土曜日,サントリーホールに小澤征爾指揮,新日フィル・スペシァル・コンサート2009に行ってきました.当日,日フィルのマチネーがあったせいか,珍しく開演が19時半ということでした.

プログラムは,ハイドン没後200年ということもあって,                           ハイドン:    協奏交響曲 変ロ長調 Hob.I-105                                                 ソリスト:豊嶋泰嗣(vn), 花崎 薫(cell), ルンブラレス(ob), 河村幹子(fg)
                    ※※※※※※※※      
ブルックナー: 交響曲第1番ハ短調(リンツ稿 ノバーク版)
でした.

ハイドンはオケの人数を少数に絞っていたので,管も弦もたいへん綺麗な音でまとまって,そして新日フィルでは最高のソリスト達に弾かせていて,たいへん聴き応えがありました.
とくに新しく加わって間もないオーボエのルンブラレスの美しい音は,よく響いて低音のファゴットを盛立てており,出色の人材だと思えました.あとヴァイオリンとチェロ,特にヴァイオリンの豊嶋泰嗣は,ノミの心臓といわれて決してソリスト向きではなかったのですが,今夜は4人が並んで譜面台を前に弾けたので,見違えるように美しい音を響かせ,第1楽章で他のソリストを合わせたカデンツア風の部分では大きな役割を担って好演していましたし,第3楽章ではアリア風のモノローグを本当に美しく聴かせてくれました.

ブルックナーですが,つい最近の昨年9月にムーティ指揮ウイーンフィルハーモニーの公演で交響曲第2番を聴いていたので,たいへん興味を持って聴けました.ムーティは,余り演奏機会のない2番を取り上げるに当たって,ブルックナーのその後の傑作交響曲の萌芽を含んだ曲なので取り上げたといっていたのですが,今回,小澤が1番を取り上げた理由は語られていませんでした.                
改訂魔だったブルックナーは,1866年の第1稿に大改訂を加えて1890年に第2稿を完成していますが,今夜は第1稿が演奏されました.

オーケストラが俄然大編成になり,ヴィオラが6列,ヴァイオリンも前に6列で多分第2ヴァイオリンの後ろにもう2人いたと思います.これは,ブルックナーがたいへん管楽器を重視しているのでバランスを取る上で必要不可欠だったのでしょうが,流石にそうなると第1,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバスのユニゾンがどれもハイドンの少人数の場合の美麗さを失っていました.
管楽器,とりわけトロンボーンとホルンはたいへんよく音が鳴っていたのですが,管のなかでも木管を含めると決してよくバランスが取れていたとは思えませんでした.

この曲で,その後の交響曲で必ず現われる持続的な歯切れのよいリズムが明瞭に現われることはなかったのですが,それでもいかにもブルックナーらしいリズム感が,今夜の小澤の指揮からよく表現された所がありました.とりわけ第3楽章から第4楽章にかけて,おだやかな雰囲気から一挙に力強いファンファーレに導かれた終章に向けてたたみかけるような演奏が,ブルックナーらしさを見事に引き出していたと思います.100%ではありませんが,これだけの大編成をそれなりにまとめた手腕は評価したいと思います.

それにしても,曲が終わるや否や,「ブラボー」と大音声が入ったのはたいへんなつや消しでした.NHK交響楽団なら,自分の声を録画させようという気持が分らないでもありませんが,2度も3度も同じ人に叫ばれ,加えて,明らかに新日フィル関係者席と思われる15列目の左から2つ目のブロックからスタンディング・オベイションが始まったのにはたいへん驚きました.

アメリカのオーケストラでも異例の29年という長期にわたって(ボストン交響楽団音楽監督の)任を務め国際的に世界最高のオーケストラのひとつに築き上げた」という小澤征爾の紹介は,いったい誰が書いたのか知りませんが,ボストンの音楽フアンの大多数はむしろ「よくもこんなに長居し過ぎて,ボストン響をアメリカの超一流から2流に落としてくれた」と考えているのです.
そのことは私の一連の小澤征爾に関するブログで紹介したアメリカ,ヨーロッパの音楽批評をみていただければ,お分かりいただけるはずです..

現実に,29年もいたボストン響から名誉音楽監督の称号を貰ったのは,退団4年後,それもボストン・シンフォニーホールではなく,タングル・ウッドでだったのですし,やっとボストン.シンフォニーホールの指揮台に迎えられたのは,実に6年も経ってからだったのです.                                 その間,レバインがメトロポリタン歌劇場と掛け持ちでボストン響の再生に務め,ようやく昔の栄光を取り戻してから小澤を指揮台に迎えたのが実情です.                              

                                                

     

                                                                                                                                  


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