オペラシティ:ヒラリー・ハーンのヴァイオリン・リサイタル [音楽時評]
新年最初のコンサートを聴きにオペラシティに行ってきました. ヒラリー・ハーンのヴァイオリン・リサイタルで,ピアノ伴奏は,ソリストとして各地で活躍しているヴァレンティーナ・リシッツアでした. JTアートホールの室内楽シリーズ「音楽家からの年賀状」を買ってありながら,後から買ってのオペラシティでした.
プログラムは,たいへん個性的で, イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 Op.27-4 アイヴズ: ヴァイオリン・ソナタ第4番「キャンプの集いの子供の日」 ブラームス: ハンガリー舞曲集より No.10,11,12,19,5,20,21 アイヴズ: ヴァイオリン・ソナタ第2番 「秋」,「納屋の外で」,「リヴァイヴァル運動」 ※※※※※※※※ イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番 ホ長調 Op.27-6 イザイ: 子供の夢 Op.14 アイヴズ: ヴァイオリン・ソナタ第1番 バルトーク(セイケイ編): ルーマニア民族舞曲 (6曲) でした.
アイヴズは,「日曜作曲家」といわれる人で,生命保険会社に入り,副社長まで勤めた人で,作曲は趣味だったといわれます.それだけにいろいろ自由な現代作曲技法を先駆的に試みており,また,古典名曲をサブリミナルな形で多く引用しているといわれます. 3曲もまとめて演奏される機会は,滅多にないそうですが,ハーンの美しく端正な叙情性に相応しい曲で,時に諧謔性を含んだアイヴズをしっとりと聴かせてくれました.特にピアノとのやりとりは見事なものでした.
2曲のイザイの無伴奏ソナタは,ヒラリー・ハーンが最後のイザイの弟子に師事したこともあってか,この夜の圧巻でした.とかく乾燥した響きで弾くヴァイオリニストが多い中で,ハーンは,まったく段違いに美しい音で,たいへん情緒豊かに4番,6番を名演してくれました.これまで何人ものヴァイオリニストを聴いてきましたが,この人のイザイは本当に格別の感がありました.
ブラームスとバルトークには,それぞれ民族舞踊のリズムとメロディを含んで,懐かしいメロディに出会いましたが,ここで示されたヒラリー・ハーンの天性のリズム感が,これらの舞曲集を素晴らしい演奏に高めていました.
新年早々から,忘れがたい演奏会に出くわしたことを嬉しく思いました. ただ,オペラシティではなく,昨夜のトッパンのチケットを買い損なったのが悔やまれました. なお, ヒラリー・ハーンは、J.B.ヴィヨーム1864年製作のヴァイオリンを使用しているそうです.
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