SSブログ

日フィル:マエストロサロン:H. ヘンヒェン [音楽時評]

9月10日に国際フォーラムで開催されたマエストロサロンへ行ってきました.

9月12,13日の日フィル・サントリー定期の指揮者ハルトムート・ヘンヒェンがマエストロです.
現在は特定の楽団との関係はないのだそうですが,ドレスデン聖十字架合唱団からキャリアを積んで,長くネザーランド・フィルとネザーランド歌劇場の常任ないし音楽監督を務め,欧米で広くオーケストラとオペラのバランスを保った客演指揮を重ねているそうで,とりわけミュンヘン・フィル,パリ・オペラとの付き合いが長いそうです.

この定期で取り上げる曲は,

シューベルト:交響曲第7番「未完成」
ブルックナー:交響曲第9番 二短調

ですが,この2つの曲はシューベルトが2楽章,ブルックナーが3楽章といずれも未完成に終わった曲です.

マエストロは,2曲とも未完成の曲を取り上げる演奏会は希で珍しいといっていました.
また,シューベルトが未完成に終わったのは,ベートーヴェンに倣って大曲を作ろうとして,2つの楽章のあとに続ける楽章に行き詰まったからだろうと推察していました.事実,第3楽章,第4楽章の構想スケッチはあったようです.
シューベルトは交響曲第8番「ザ・グレート」にそれを持ち越したのだということでした.

ブルックナーが第9交響曲を未完に終わったのは,ベートーヴェンが第9交響曲を遺して亡くなったので,その後,「第9交響曲を作ると死ぬ」という迷信が遺されており,ブルックナーは第3楽章までいって,なかなか着手した第4楽章の完成に至らず,もし自分が第4楽章を未完に終わったら,「テ・デウム」を当ててくれと言い残したといわれます.
このいわば遺言に従って,実際に第4楽章に「テ・デウム」を当てた演奏がかなり広く行われたそうですが,ブルックナーの比較的初期の曲を,最晩年の曲につなぐことの無理が広く認識されて,最近は,ほとんど第3楽章までで完成品として演奏するようになっているそうです.
第1楽章では第1から第3主題が展開されるのだが,とくに第1主題はいくつもの動機が展開されるので,後半では第2,第3主題が再現され,最後は五度の音階が使われるところで,空虚5度という中間が抜けた5度が使われているそうです.

第2楽章はベートーヴェンに倣ってか,スケルツオ楽章となっているが,突如として爆発的なトゥッティが現われ,世俗的な音楽で終わる.

第3楽章は,死を予感したブルックナーの宗教心を表したといえる抒情的な静けさと神への畏怖を籠めた音楽で,最後のコーダは,ワグナー・チューバが次第に静かになって,マーラーの第9を思わせるような静寂のうちに終わりを迎える.
ヘンヒェンは,ワーグナー・チューバ奏者が死なないように,あまり長く引っ張らないで終わらせるといっていました.

たいへん率直な語り口で,ユーモアを交えて,説得力のある話を聞くことが出来ました.
私は,何もノートを取らずに,記憶に頼って書いていますが,日本フィルのサイトを辿ると,このマエストロ・サロンの写真と音声記録を見聞きできるそうですから,ご関心の方は参照下さい.






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。