東京のオペラの森オーケストラ公演:ムーティの名演 [音楽時評]
4月4日に,前のブログで新日フィル,アルミンクによるモーツアルトの「レクイエム」を批判したのと対照的なたいへんな名演に接することが出来ました.それはムーティが「東京のオペラの森管弦楽団」「同合唱団」を指揮したヴェルディの「聖歌四編」からの「スターバト・マーテル」と「テ・デウム」,そしてロッシーニの大曲「スターバト・マーテル」でした.
昨年のムーティはヴェルディの「レクイエム」をやってチケットが直ぐ完売になったのに懲りて,今年はプレ・オーダーでチケットをとったのですが,1階左前方という悪い席で,プレオーダーはいい席が保障されないという矛盾を実感しました.今年は曲目が馴染みが薄かったせいか直前までチケットが残り,折り込み宣伝で足りず,新聞広告や新たなC席販売など涙ぐましいセールスをやって,ようやくほぼ満席にこぎ着けたという状況でしたから,一般販売の方がはるかに良い席を指定して買えたはずです.あらためて日本人の移り気をまざまざと感じさせられたところです.
演奏の素晴らしさを生み出した最大の功績はムーティの優れた力量にありますが,それをいっそう高めたのが,合唱指揮に1991年から長くミラノ・スカラ座合唱団の指揮者,2000年代にはローマ・サンタ・チェチェーリア・アカデミー合唱団の指揮者を務める合唱指揮のスペシャリスト,ロベルト・ガッビアーニを合唱指揮に迎えたことにあったと思います.
合唱団の並び方もいつもの日本流とは違いました.男性陣が後列に,女性陣が前列に並び,アルミンク,新日フィルの栗友会の場合のように左に陣取ったソプラノがキンキン響くこともなく,実にうまく合唱のハーモニーがとられていました.
私のロンドン大学時代の友人でザルツブルグの合唱団に属し,日本の合唱団との交流でたびたび東京に来たことあるオーストリア人夫妻が,日本の合唱団はファクトリー(製造工場)のようだとたびたび批評していましたが,指揮者に月謝を払って集められた合唱団と演奏会出演でなにがしかの謝金を受けるプロの合唱団の差違が,日本では月謝に依存した指揮者・合唱団の勢力があって,区別されていないのは,音楽後進国の悲しさでしょうか!
とりわけ宗教音楽の合唱曲を原語で演奏する場合,今後はもっともっと欧米から専門の指揮者を迎えるべきではないでしょうか.昨年はモーツアルト・イヤーということもあって,スエーデンやオーストリアから優れた合唱団が来て名演を残してくれたことが思い出されます.
はじめまして。こんばんは。
私も4月4日の公演、前方で聴いていました。
さすがにオケと合唱のバランスが悪かったですが、ムーティの仕草が細かいところまで見えて、それが面白かったです。
合唱すばらしかったですね!「本当に日本人かい!?」と思ったほどです。
TBさせていただきました。よろしくお願いします。
by しじみ (2007-04-08 20:39)
コメントをお寄せいただきありがとう存じました.しじみさんにお礼をと思って最近しじみさんのブログにトンチンカンなコメントを書いてしまいましたが,これに懲りず,またお読みいただいてコメントいただければ幸いです.
by shmusicart (2007-11-28 13:44)